「彼は禁忌の魔法を使った罰として永遠の時………早い話が、生きたまま凍り付けの状態にされているのよ」

「あ………すみません」

「いいわよ、別に」

 しおれるマリィに、セレビアはそっぽを向いて返した。

 その話を聞いて、仙太がふと気付く。

「もしかして、セレビアさんが今まで必死に“本”や“鍵”を探していたのって、その人を助けようとして……」

「………………」

 何も答えようとしないセレビアだが、表情が全てを物語っていた。部屋の隅にいる空兎が小さく呟く。

「……すごいな」

 人のために“奇跡”を起こそうとするセレビアに空兎は素直に感動した。

 同時に、少し切ない気持ちになる。

 ひょっとしたら、という気持ちになり、空兎はジョーに尋ねてみた。

「ねぇ、ジョーさんも何か叶えたい“奇跡”あるの?」

「僕、ですか?」

 急に振られ、ジョーは驚いた様子を見せたが、空兎の真剣な眼差しが戯れに訊いているものではないと感じとり、落ち着き払って応えた。

「僕の叶えたい“奇跡”……それは、もうありませんよ」

「もうないってことは……前はあったの?」

「いえ、正確には迷ってる………と言ったほうが正しいですね。出来ることなら、過去に失ったものを取り戻したいです」

「それって、変身能力?」

「違います。……もっと大切な人ですよ」

 ジョーの笑顔が少し曇りがかり、空兎はそれ以上、訊けなくなった。

 が、少し経ってから、独り言のように空兎が呟く。

「もし、ジョーさんのその……大切な人が亡くなった人なら、“奇跡”で生き返らせることもできるよ。クヲンくんが言ってた。“奇跡”は、普通じゃあり得ないことを起こすことだって……」

「そうですか。死者の生還。確かに普通じゃあり得えませんね」

 それを聞いても、ジョーの表情には笑みの中に空しさを滲ませていた。