それを見た仙太が話題を切り替える。

「あ、そういえば、“本”と“鍵”が揃ったってことは、あの開かなかったページは開くようになったんでしょうかね?」

「そう、それがまだみたいよ。どうやらまだ何か足りないみたい」

 セレビアが残念がってその質問に答える。

「あ、でも、セレビアさんの魔法でちょちょいとできるじゃないんですか?」

「………あんた、聞いてたの? あの会話」

 ジロリとジョーを睨むセレビア。それに少し困惑しながらジョーは続ける。

「あ、いや、偶然です偶然。あの後、すぐに追いかけたのですが、何やらお話の最中だったので、その中に割り込むのも少々はばかられたもので、扉の前で待機してました。その後、銃声が聞こえたもので突撃したというわけです」

「はぁ………道理でタイミングがよかったわけね。まぁ、いいわ。でも、あれはあの場の出任せ。嘘っぱちよ」

 ため息を吐くようにセレビアが言った後、仙太が尋ねる。

「あの、何の話ですか?」

「あぁ、ごめんね。実はあの“本”の著者の魔法使いって、私の師匠だったの」

「ほへー、犯人は案外身近にいたってことね!」

 空兎が名探偵気取りのポーズを決めるが、それに反応を示したのはマリィだけだった。

 どんよりと部屋の隅で落ち込む空兎を置いて、セレビアは話を進めた。

「組織のボスはその繋がりで、私に何か知ってるかって言ってきたけど、私にはサッパリだったわ。でも、チャンスだったから上手いこと言って、あの“本”と“鍵”を奪って脱出するつもりだったけど、失敗したわ。ヒーローくんに助けてもらわなかったら、死んでたかもね………」

 己の無謀さに今思えば呆れるのか、セレビアは口元を自嘲気味に笑みを型どった。

「あの、初歩的な質問なんですが、そのお師匠様は今どうしていらっしゃるのですか?」

 それを尋ねたのはマリィだった。セレビアは数秒、返答に躊躇したが、その辛い真実を明かした。