空兎がテーブルから降りてから、互いにこれまでの経緯を話し合った。

 ジョーやセレビアが今まで、あの組織に捕まっていたこと、空兎や仙太がクヲンの思惑によって“鍵”を奪われたことを、その“鍵”も空兎の嬉しい心等を糧にして成長したことも話した。

「まんまとやられたってわけね………あの堕天使くんに」

 “鍵”の件を聞いたセレビアは、ため息混じりにそう告げた。自分も“本”の件で、空兎達を出し抜こうとした上、煮え湯を飲まされたため、そのことで空兎を責めることは出来なかった。

「しかし、何を考えているんでしょうね、彼は……」

 そう口にしたのはジョーだ。

「何を考えてるも何も、あの訳の分からない組織の忠実な犬ってことでしょ?」

 セレビアが毒づくと、ジョーがすぐさま否定する。

「いえ、そうとも言えないんですよ。僕をあの牢から出してくれたのは、クヲンくんなのですから」

 その言葉に一同が驚愕する。そして、空兎とマリィがほぼ同時にジョーに詰め寄った。

「ジョーさん!」

「それ、本当ですか?」

 今にもくっつきそうな二人の少女の顔に、少々怯みながらもジョーはいつもの表情を崩さずに返した。

「えぇ、本当です。牢にはセキュリティシステムがありましたが、クヲンがそれを壊して僕を出してくれました」

 その言葉に、二人の目尻が僅かに下がった。そして、仙太の不機嫌な咳払いが二人の耳に届く。

 気付けば二人ともテーブルの上に乗って、ジョーに詰め寄っていたのだ。弾かれたように、二人は元の位置に戻っていった。

「確かにおかしな話ね……ヒーローくんを逃がしても、堕天使くんにメリットはないはず……ひょっとしたらあの組織の命令だったのかしら?」

「いえ、多分違うでしょう。あの組織は、できることなら僕を亡きものにしたがってましたから」

「だとしたら堕天使くんの独断か……ますます分からないわね」

 顎に手を当てて考え込むセレビア。途端にマリィの表情が曇った。