セレビアの言葉を信じきっている者ならば、苦労して手に入れた“鍵”と“本”を無駄にするという可能性が高いこの提案は、まさに愚策だ。

 そう、セレビアの言葉を信じきっている者ならば………

(……舐められたものね)

 見下されているようなルミネの視線がセレビアの癪に障った。

「では、ルミネ様。セレビア様の枷を外してもよろしいでしょうか?」

 傍らにいたレンカがセレビアに歩み寄りながら、ルミネに尋ねる。ルミネは「頼む」と短く答えた。

 考えが纏まらないうちに話が強制的に進めれ、セレビアは額に嫌な汗を浮かべた。

 カチャリ、と、レンカの持つ鍵で、セレビアの枷が外されると、背中の感触がスッと消えた。

 セレビアがそれに疑問を持ったその瞬間、銃声が轟き、右の太股に激痛が走った。

 手をつく暇もなく、頭から崩れ落ちるセレビア。かけている眼鏡が床を滑っていく。

「悪いが、先制させてもらったぜ。枷が外れた時点で、パワーバランスはアンタに傾いたんだ。躊躇ってたら、こっちがやられるかもしれないんでね」

 倒れているセレビアを見下ろして、灰山が言い放つ。