「あの・・・・・・頭、強く打ちました?」

「全く問題ありませんよ」

 仙太の少々失礼な質問にも、ジョーは全然気にしていないといった感じの爽やか笑顔で返してきた。

「その、もうすぐ救急車来るんで、それまで頑張れ・・・・・・ますよね?」

「はい。余裕です」

 むしろ、もう必要もなさそうな清々しい笑顔だ。

 仙太はジョーとの会話をそれで締めることにした。

(これ以上、疲れたくない・・・・・・)

 それが仙太の率直な気持ちだ。
 対して空兎は、もう興味津々といった感じで、ジョーと話し込んでいる。

「ねぇ、ジョーさん! ヒーローなら変身できるの!?」

 嬉々として空兎が尋ねると、ジョーは少しばつ悪そうに答えた。

「本当なら先程、強盗事件が起きたとき、すぐに変身して犯人達をやっつけるつもりだっ
たんですが、実は今、事情があって変身できないんです。でも、ヒーローとして何とかしようと思って、せめて気分だけでも強くなろうと思て、代わりにコレを被ってみたんですが・・・・・・」

 そういってジョーは、あのヒーローお面を見せ、その後、自嘲気味に

「まぁ、僕は撃たれてしまって、結局、あの強盗をやっつけてくれたのは、君なんですけどね・・・・・・いやはや、ヒーローとして実に情けないです」

 と、赤面した顔で付け足すと、それを空兎は全力で首を振って否定した。

「そんなことないっ! だってジョーさん、アタシを守ってくれたじゃん! 十分ヒーロー! 文句ある奴は、アタシが片っ端から蹴るわ!」

 と、心底からの笑顔とサムズアップで断言した。
 ジョーは一瞬、驚いた顔をした後、微笑みを浮かべてから「ありがとう」と呟いた。