「えぇ、そうよ。だってこの枷がある限り、私は魔法が使えないじゃない。それではせっかく苦労して手に入れた“鍵”が宝の持ち腐れ………“神杯”への道のりが遠のきますわ〜……ボ・ス・さ・ま」

 ルミネの指摘に怯むどころか、逆に馬鹿にするようなセレビアに、灰山とレンカは苦い顔をした。

「調子に乗るなよ……!」

 背後に銃を突きつけていた灰山が、それを背中へて密着させる。

 それでも、セレビアは悠然な態度を崩すことはなかった。

「脅しは無駄よ……私を殺せば、そこで“神杯”探索は延長戦突入決定……」

「拷問って、手もあるぜ? あんたを無理矢理従順させることなんてわけないんだ」

「残念だけど……無理矢理ってのは趣味じゃないの。そんなことされたら迷わず死を選ぶわ」

 セレビアの声に迷いは感じられなかった。振り向かなかったので、顔は伺えなかったがその分、声からくる言い知れぬ迫力に灰山は畏怖を感じた。

「で、どうするのかしら? ボス様。この枷、外してくださるかしら?」

 妖艶に微笑みかけるセレビアに、ルミネは目のやり場に困ったかのように、その目を静かに閉じて告げた。

「……しかし、その枷を外せば君は魔法が使えるようになる。そうなっては我々だけでは、いざとなった時に勝ち目がない……ジレンマだな」

「そうね。私が枷を外された途端、“本”と“鍵”を奪って逃走……ってこともあるわよね? でも、あなたが選択すべきは私の枷を外すか、諦めるしかないのよ。あぁ、マレスト本人に聞き出すってのは無理よ。だって、彼は……」

「知っている。禁忌の魔法で永久の時間の中で生きているのだろう」

「…………」

 セレビアの悠然としていた表情が、ポーカーフェイスへと戻った。わざと冷たい口調で選択を迫る。

「早く決めなさい……さもないとこの場で舌を噛み切って死ぬわよ?」