翌日の土曜日。まだ愚図ついた天気が続いている。
「降るかもな……」
ベランダ側の窓から空を見上げてクヲンは呟く。朝食も済み、これから学校へ行こうというところで、どうにも気分が盛り上がらない天候にクヲンの気持ちが萎える。
そんな中で突然鳴り響いた軽快な音楽は、今の空兎やクヲンの気分とは全く裏腹なものだった。
「あ………叔母さんからだ」
それは、空兎の携帯電話が奏でる着うただった。空兎は、テーブルに置いてある自分の携帯電話を恐る恐る手に取ると、躊躇しながら開始ボタンを押した。
「も、もしもし……」
『あ、空兎ちゃん? よかったぁ、仙ちゃんにメールしても返信ないから心配してたの。電話しても繋がらないし……今、一緒にいる?』
空兎は言葉に詰まった。一番訊かれたくないことを、一番問われて欲しくない人に訊かれて、それをどう答えていいかわからず混乱してしまった。
「あ、あの……………」
言葉が上手く紡げない。正直に話せば沙恵美がどんな言葉を返してくるか…………空兎は、考えたくなかった。
かといって上手い言い訳がすぐに思い付くわけもなく、言葉を詰まらせるしか、空兎にはできなかった。
『空兎ちゃん?』
「あ……………あのね」
『もしかして、今、ちょっと話しづらいかな?』
沙恵美の穏やかで優しい口調に空兎は、また言葉が詰まる。
もう、黙ることしか出来なかった。
電話を通して交わされる数秒間の沈黙。たった数秒間なのに空兎にはそれが数分にも、数時間よりも長く感じられた。
その数秒間の後、空兎の耳に沙恵美の優しい声が聞こえてくる。
『あ、もう行かなきゃ……ごめんね、朝から変な電話しちゃって』
「う、ううん……………ね、ねぇ、叔母さん」
『ん? なに?』
「……………………早く帰って来てね」
『ありがと。けど、ちょっとまだ難しいかなぁ。でも、頑張るね。だから、空兎ちゃんも元気で学校行ってらっしゃい』
「うん…………いってきます」
「降るかもな……」
ベランダ側の窓から空を見上げてクヲンは呟く。朝食も済み、これから学校へ行こうというところで、どうにも気分が盛り上がらない天候にクヲンの気持ちが萎える。
そんな中で突然鳴り響いた軽快な音楽は、今の空兎やクヲンの気分とは全く裏腹なものだった。
「あ………叔母さんからだ」
それは、空兎の携帯電話が奏でる着うただった。空兎は、テーブルに置いてある自分の携帯電話を恐る恐る手に取ると、躊躇しながら開始ボタンを押した。
「も、もしもし……」
『あ、空兎ちゃん? よかったぁ、仙ちゃんにメールしても返信ないから心配してたの。電話しても繋がらないし……今、一緒にいる?』
空兎は言葉に詰まった。一番訊かれたくないことを、一番問われて欲しくない人に訊かれて、それをどう答えていいかわからず混乱してしまった。
「あ、あの……………」
言葉が上手く紡げない。正直に話せば沙恵美がどんな言葉を返してくるか…………空兎は、考えたくなかった。
かといって上手い言い訳がすぐに思い付くわけもなく、言葉を詰まらせるしか、空兎にはできなかった。
『空兎ちゃん?』
「あ……………あのね」
『もしかして、今、ちょっと話しづらいかな?』
沙恵美の穏やかで優しい口調に空兎は、また言葉が詰まる。
もう、黙ることしか出来なかった。
電話を通して交わされる数秒間の沈黙。たった数秒間なのに空兎にはそれが数分にも、数時間よりも長く感じられた。
その数秒間の後、空兎の耳に沙恵美の優しい声が聞こえてくる。
『あ、もう行かなきゃ……ごめんね、朝から変な電話しちゃって』
「う、ううん……………ね、ねぇ、叔母さん」
『ん? なに?』
「……………………早く帰って来てね」
『ありがと。けど、ちょっとまだ難しいかなぁ。でも、頑張るね。だから、空兎ちゃんも元気で学校行ってらっしゃい』
「うん…………いってきます」