仙太が目覚めたのは、つけていたテレビのチャンネルが砂嵐から早朝の体操番組が始まった瞬間だった。

 番組のタイトルは『ファンキーロック体操』。

 モヒカン頭にサングラスのランニングシャツ姿の若い男がテレビの中でロックミュージックに合わせて軽やかな体操を視聴者───この場合は仙太に見せつけていた。

「こんな番組やってたんだ………」

 初めて見た新感覚番組に衝撃を受けつつ、仙太はゆっくりとテレビの電源を切った。

 すぐに時計を見て時間を確認。

 時刻は五時。

 普通なら起きるには早すぎる時刻だが、ここはジョーのアパート。

 ここから仙太の自宅へ帰って、今日の学校の時間割の準備、空兎の血に汚れた制服の換えなどを考えると少し余裕があるくらいで丁度良い。

 そう思った仙太は、ベッドでまだ安らかな寝息をたてている空兎を起こす。何故か掛けていたはずの布団が抱き枕状態になっているが、あえて気にしないことにした。

「ほら、空兎、起きろ。朝だ」

「ん〜〜〜れっつ、ふぁんきぃ〜〜」

「…………」

 突如として、つい先程の番組の掛け声を寝言で口走る空兎に、仙太は早朝から背筋が凍る思いをした。

 それでも、なんとか気を取り直して空兎を起こし、昨日使ったバスタオルと空兎の制服を自分の鞄に無理矢理詰め込む。バスタオルは自宅で洗濯してから返すつもりだからだ。

「それじゃ行こうか」

 仙太が空兎を促すが、その空兎は、まだベッドに腰をかけたまま動こうとしない。

「……大丈夫、かな?」

 顔は俯いて、栗色の長髪が横顔のカーテンとなって表情は見えないが、声のトーンから不安だというのが伝わる。

 空兎のそんな問いに、仙太はすぐに返すことができなかった。

 自分はジョーのように体がヒーローのように丈夫でも、セレビアのように魔法が使えるわけでも、クヲンのように天使の翼で飛べるわけでもない。

 特別な力のない普通の人間なのだ。

 根拠がない自信で虚栄が張れる程、仙太は器用ではなかった。

「……ごめん、保証できないよ」