「理不尽………そう、理不尽だよね……アタシ、ただ楽しみたかっただけなのに、普通じゃないことをしたかっただけなのに、それを邪魔してくる人達がいる……そりゃ、“奇跡”はアタシだって欲しいけどさ……誰かを傷つけてまでも欲しくないよ」

　空兎の口調はずっと変わらなかった。感情が爆発してもおかしくないような語りにも関わらず、それを一切含ませずに口に出した。

　そんな空兎に合わせるかのように、仙太も口を開く。

「でも、あの人達にとっては、誰かを傷つけてまでも、“奇跡”が欲しいのかもしれない……空兎にとって、それが理不尽だとしてもね」

　仙太のその言葉をどう受け止めたのか、空兎は一分程置いて返した。

「………そっか」

　それが納得した意味なのか、それとも別の何かなのかは仙太にはわからなかったが、あえて追求はしなかった。

　話題が尽きてしまったところで報道番組が終わり、お決まりのクイズ番組がスタートした。

　そのクイズ番組が中盤に差し掛かったところで、ピザの配達を告げるインターホンが鳴った。

　予定より、だいぶ早い到着だった。

　それを二人はテレビを見ながら会話もなく黙々と食べ、空兎からの提案でジョーのためにと四切れ程残して夕食を終えた。

「じゃあ、今度は僕がシャワー使うね」

　ジョー用のピザを皿にまとめ、ラップに包んだものを冷蔵庫に入れるなり、仙太が空兎に告げた。

「うん」

　空兎には物足りなさ過ぎる量の夕食だったろうが、文句を洩らす素振りは見せずにそう返事をする。相変わらず目はテレビに釘付け状態だ。