強烈な蹴りに倒れる男子生徒に押され、後はドミノ式に倒れていく野次馬生徒達。
その光景を空兎は、ニヤニヤとしてドアぶちを掴みながら見下ろしていた。

 そして、全員が倒れたのを見計らってから自分は無事に着地。

「うし! 成功!」

 勝ち誇った表情となる空兎だが、直後に突き刺さったのは教師達の眼差しであった。

「・・・・・・・・・あ」

 その中には担任の萵車もいる。
 気まずい空気を肌で感じた空兎は、なんとか笑顔を作って、

「空兎、参上♪………なんて、ね♪」

 と精一杯に誤魔化してみたものの、失敗に終わった。
 廊下まで届いた教師達の怒鳴り声は、仙太の頭痛の種を増やした。

 その後、図書室内で何やら駆けずり回る物音を仙太は聞いたが、その光景はあまり想像したくなかった。

 しかし、程なくして聞こえてきた空兎の絶叫には、思わず反応してしまった。

「“本”がなぁぁぁい!!」

 世界で一番大事な物を失ったような空兎の叫びは、校内中に響き渡った。