(ぐっ……油断した)

 思わず目が合った仙太は、軽く後悔。
全力で心を落ち着かせようと咳払いを一つして、心を落ち着かせる。

「りょーかい。そんじゃ、テレビでも……あ、今、停電中だった……」

「………なんですとぉぉおお!!」

 まるでこの世の終わりを宣告されたかのような雄叫びと同時に、空兎は居間へダッシュ。すぐにテレビの主電源を押した。

 テレビは沈黙を保ったままだった。

「ノォォオオ!! 今日もニャンコのコーナーがぁぁっ!!」

 居間中に響き渡る空兎の絶叫。
 嫌な予感を覚えつつ仙太が居間を覗くと、何やらハチマキにマジックで文字を書いている空兎の姿が見えた。おそらくそこに書かれるであろう文字は『再放送要求!』だろう。

(テレビ局にでも殴り込む気か……?)

 もちろんそうなれば仙太は止めるつもりだ。
 そして予想通りの文字を書き終えた空兎は、それを頭に巻き付けるなり立ち上がった。

 だが、そこで空兎に異変が起きる。

「にょわ!?」

 奇っ怪な叫びと共に空兎が次に駆けたのは、テレビ局などではなく、トイレだった。

「あの牛乳……やっぱり危険だったか」

 居間に放り出された牛乳パックを見て、仙太は目を細めた。


§


 空兎のお腹が落ち着く頃には仙太特製の朝食セットは完成していた。

「うわーん、ヨーグルト食べたい~!」

「あれも危険信号点滅中だ」

 そんな会話を繰り広げながら、二人は電気のありがたみを改めて知るのであった。
 朝食が終わり、仙太は後片付け、空兎は自分の部屋で身支度した。

「うぉし!」

 鏡で自分の制服姿を確認して、気合いを入れる。
 それからマスコットを沢山くっつけた鞄を手に取り、机の上でまだ眠っているキィをその中の一つとして紐でくくりつける。

「ウキュ?」

 目を覚ましたキィが「何事?」と言わんばかりの表情を空兎に向ける。空兎は「し~」と人差し指を口元に立てて、伝わるかも不明なキィに告げる。

「いつものように学校じゃ鳴いちゃダメだよ♪」

「ウキュ♪」

 ウィンクする空兎に、キィは大きくて円らな瞳を「了解♪」といった感じで、愛らしく閉じた。