セレビアとクヲンの声がハモると同時に、クヲンは攻撃を止めて、思わず“本”を拾いに急降下する。

 瞬間、セレビアの口元が愉悦に歪んだ。

「おバカちゃん♪」

 それは、クヲンがセレビアの下に来たときに口に出た言葉だった。
 クヲンが振り返ると、そこには指先に炎を携え、それを球体状にし、人一人を覆わんばかりに巨大化したものが見えた。

 例えるなら太陽。

 すでに熱風がクヲンに届いていた。

「かかったわね♪」

 図書室の壁に穴をあけたときとは比べ物ならない威力になった灼熱の爆弾が、クヲンの前で爆発した。


 激しく燃え上がった炎の音は一瞬で終わり、夜に静寂が戻る───


「………ふぅ」

 目の前に見える散り散りなった白き羽根を見て、セレビアは勝利を確信した。






















「かかったな♪」

 背後より、クヲンの声あり。

 セレビアが振り返ると同時に走ったのは胸の激痛と、目に焼きついた彼の勝ち誇った笑み。


 そして───この天使の頭上に輪がない理由を悟った。


 再び、夜に静寂が訪れる。今度こそ、本当に……