「うにゃーー!」

 突然、叫んだ仙太が向かった先には炊飯器。
その蓋を開け、中にある炊きたてのご飯の熱々の熱気で、頭の煩悩を吹き飛ばしてもらうこと期待したのだ。

 しかし、頭を突っ込んでもそこに見えるのは、水が見事に張ったままの生米だった。

「…………え?」

 目を疑う仙太は、これが幻想だと祈って今一度目を擦る。
 が、目の前の光景に変わりはない。

仙太は、記憶を数時間前に遡った。

 そう、仙太は調理開始時に米を洗い、早炊きでスイッチを入れるまさにその時、紗恵美が本日夜勤で帰れないという電話がなった。

そして、それから台所に戻った時には、すでにカレーの調理に入っていた。

「はぅわ!」

 全てを思い出した仙太は両手で頭を抱え、天井を仰いだ。
 そう、単純なことにスイッチを入れ忘れていたのだ。

 まもなく空兎が鼻唄を奏でながら風呂から上がってくる。

 パニックになる仙太を余所に、コトコトと煮込まれ続けられる鍋の中のカレーは、美味しさを増していった。


 ……………
 …………
 ………


 ───“奇跡”は、一パーセントの可能性もない場合に起こせる。


 ───もし、空兎の心の中に僕が、一パーセントもないのなら……。


 ───僕が望む“奇跡”は・・・・・・・・・。




  【NO.6みんなの奇跡 完】