無垢な空兎と無垢なクヲン。
 確かにお似合いかもしれない……と。

 カラン。

 不意に響いたのはサラダを食べ終わったクヲンのフォークだった。

「ふぅ~、食った食ったぁ。美味かったぜ、せっち。まっ、麺は短めだったけどな!」

 然り気なく気付いていたクヲンに、仙太はギクリとなるが、空兎だけがクヲンの言っている意味がわからず残りの面をチュルチュルと平らげていく。

 そこでいつもなら二杯目のおかわりを要求するところだが、今回は材料不足につき却下された。

 それから三人はゲームや雑談などで盛り上がりながら昼時を過ごしたが、クヲンは三時のおやつが来る前には「急用」ということで帰っていった。

「ねぇ、クヲンくんってさ、・・・彼女とかいるのかな?」

 クヲンを見送った玄関で、恥じらいながら仙太に尋ねる空兎。

「さぁ……」

 仙太にとっては聞きたくなかった質問だった。
 幸せそうな空兎の笑みが、仙太には複雑に映ったが、空兎の胸中は小さな幸せに満ちていた。


§


 時はさらに経って夕暮れ時───
 街を一望できる山の高枝に天使が一人、まるでソファのように枝に寄り掛かりながらそこから見える景色を眺めていた。

「なかなか……厄介なことになってるなぁ」

昼間の空兎や仙太の会話を思い起こして、クヲンは目を閉じる。

 最初に同時に感じたのは“罪悪感”。

「わりぃな………」

 ゆっくりと目を開け、呟くクヲン。
 五月終わりの風が銀色の髪をなびかせる。


 そして、クヲンはある一人の少女との出会いを思い出す───。