「アタシの叶えたい“奇跡”は・・・あると、思う・・・・・・かな?」

「・・・・・・どっちだよ?」

 珍しく歯切れの悪い空兎に仙太が突っ込むや否や、彼女は再び顔を真っ赤にした。

「い、いいでしょ! こういうのはね、なくても、ある! って答えた方が得なの! せっちんも覚えとくといいわ!」

 勢いよく捲くし立てる空兎に、仙太は呆れて返す言葉もない。
 そこへ、クヲンが「だったら・・・」と、サラダを食べ終えたフォークを置きながら告げ、空兎と目を合わせる。

「迷うことねーじゃん。俺はお前に協力するって言ってるんだからよ」

 ニカッと笑い、白く良い歯並びを見せるクヲン。

 “無垢なる天使”というフレーズが何より似合う。

 仙太の目には、そう映った。

そして一方の空兎は、先程から心臓が破裂しそうなくらい鼓動していた。

「…………」

 クヲンに見つめられて、すっかり顔を蒸気した空兎は視線を外して俯いてしまった。

「!」

 その瞬間を見てしまった仙太は、自分でも驚くほどにショックを受けた。

(……なんだよ・・・・・・その反応)

 やはり最近の空兎はどこかおかしい。
 今日クヲンがやって来てそれがはっきりした。

 空兎はクヲンに恋をしている。
 先程のクヲンのライバル宣言からも分かる通り、クヲンも空兎の事が好きなのだろう。

 つまり、めでたく二人は両想いというわけだ。

(なんだよ・・・・・・それ・・・)

 恐らくこの事に気付いたのは仙太だけだが、ライバル以前にもう決着がついたようなものだ。

(いや……僕と空兎はただの従兄妹。空兎が誰と付き合おうと僕には関係ない───)

 果たして本当にそう言い切れるのだろうか?

 仙太は自問するが自答できない。

 同い年の従兄妹。

 法律上は結婚できるとはいえ、親戚であるがゆえ持ち難いそれ以上の感情。

 けど────

(何を考えてるんだ……僕は)

 モヤモヤと芽生えてくる感情をかき消すかのように頭を振る仙太。

 俯く空兎と、それを無垢なる笑顔で見つめるクヲンは気付くことはなかったが、今まで目を回していたキィが復活して、最初に見たのがその姿だった。