「……へ?」

 語尾は、体と一緒に空中へと投げ出された。

「空兎!」

 仙太が叫ぶが遅い。続いてほぼ同時にジョー、セレビアが叫ぶが遅かった。
 そして、クヲンはというと、彼は絨毯の上から姿を消していた。

「え?」

「にぃ!」

 仰向けに落ちていく空兎に、クヲンは、白い歯を見せて余裕の表情を見せた。
そして、そのまま空兎を抱きしめるや否や次の瞬間、


 バサッ・・・・・・!


 白い翼がクヲンの背中から飛びだした。

それは、鳥に例えるなら白鳥のような優雅なものであり、クヲンはそれを羽ばたかせ、あと三メートルほどで地上に激突というところで空兎を救った。

 地上のギャラリーは、セレビアが絨毯で飛んでいくまでは六対四の割合で何かのイベントだと思っていたが、今のクヲンのアクションを見て、イベントの割合関係なく、驚きから歓声へ変わり、花火よりも盛大に盛り上がった。

「ふぅ~やれやれ。危ない所だったぜ」

 そんなこと言うクヲンだが、全然そんな素振り見せない。
対して空兎は少々混乱気味だった。

「え~と?………あれ? くく、クヲンくん? 背中に羽根が?」

「ん? あぁ、俺、天使だからよ」

 あっさりと自分の正体を明かす白矢クヲン。それに対して空兎は言葉にならない声を上げて、感激していいやら何やらでとにかく騒がしい。

「………とにかく落ち着け。取り敢えず、この騒ぎを何とかしなきゃな」

 「ふぇ?」と、三メートルにも満たない下を見る。皆こちらを見て一斉に拍手を送っている姿を見て、ますます訳が分からなくなっている空兎がここにいる。

「この拍手に応えてやるのが、女子高生って奴じゃないか?」

 ウィンクを決めるクヲンは愛らしく思えた。視線を戻した先の空兎は一瞬、何を言われたのか分からなかったが、直感的にその愛らしい顔に同意した。

「オッケー!」

 その瞬間、天使の翼が空へ舞い上がった。そのスピードは僅か数秒でセレビア逹の魔法の絨毯を飛び越し、遥か上空まで飛び上がった。