するとジョーが閃いて「空兎ちゃん、例の本を!」と告げ、「わかった!」と空兎が叫ぶと同時に、自分のリュックから“奇跡の起こし方”の本を取り出した。

「セレビアさん! あの魔法を!」

「言われなくてもやってるわ!」


 ―本に封ずる鎖よ
  汝の対となる存在を指し示せ
  我らを、導け!―


 セレビアの魔法によって現れた光の矢印が遥か天を差した。
 全員の視線が夜空に注がれる。

「嘘でしょ・・・・・・」

 絶望感に打ちひしがれるセレビアに、クヲンの言葉が裏付ける。

(見つからないはずだぜ・・・・・・まさか本当に成層圏に存在するなんてよ)

 いや、本当に太陽までいるのかもしれない。少なくとも、東京タワーや、セレビアの絨毯では届かないほどの高いところまでいけるのだろう。

 ただし、空兎だけは違った。

「いや! ここまで来て諦めない!」

 その目つきは強く、「絶対に“鍵”を手に入れてやる」という気持ちが秘められていた。

「いやいや、これだけ高い場所にあるんだ。もしかしたら成層圏かもしれない!」

「論理派せっちんは黙ってて!」

 ピシャリと、空兎に遮られて、思わず仙太は押し黙った。
 再び空兎は天を向く。

「絶対に諦めるもんか!」

 強く言い放ってゆっくりと立ち上がる。揺らめく風が少し肌寒い気がするのは気のせいだろうか?

 空兎は、風の中で、長い栗色の髪をなびかせる。
 一同の注目を集める中、さらに緊張感が高まる。
 
一つ、深呼吸。
 そして、その緊張感がピークに達するまさにその時!

「・・・・・・空兎、お前何も考えてないだろ?」

 上空、数十メートルの舞台で、仙太の声が木霊した。

「・・・・・・ば、ば、馬鹿にしないでよっ! これでも中卒―――」

 その時だ。
 突風が空兎のバランスを崩した。