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 楽しい時間はあっという間なのか、いよいよ訪れた花火の時間。
 どうやら例年通り中世の洋館をモデルとしたお城をバックに盛大に打ち上げられるようだ。

「思いっきり注目が集まりますね・・・・・・」

 仙太が若干、訝しげな表情になってセレビアに尋ねているものの、肝心の彼女は「そうねぇ」と目を細めて横に置いてある大量の買い物袋に心奪われているようだ。

 空兎とクヲンは花火ということでますますテンションが上がって手がつけられない様子。

「まぁまぁ、花火の時間までには、まだ若干の余裕がありますよ」

 ジョーが肩を叩きながら慰めてくれるものの、不安は否めない。

「でも、のんびり構えたら駄目っていうか・・・・・・」

 この作戦を発案したのが仙太自身だけあって、必死になっているのかもしれない。
 そこへクヲンの軽口が飛んでくる。

「な~に慌ててんだよ。花火の時間なんて大体・・・・・・」

 まさに、その瞬間だった。


 しゅる〜〜ん


 ドーーン!


「え?」

 五人が異口同音に唱えた。
本当に何の前触れもなく花火が始まってしまったのである。

 不意討ち?
 騙し討ち?

 似たような物言いだが、この際どうでもよかった。

「にゃあぁあ! ひひひ光の極上!」と空兎が混乱すれば

「い、いや、ご、極上の光だ! 花火だ!」とクヲンが訂正する。

「は、早く行かなきゃ!」と仙太が急かせば

「空はどうにも範疇外ですね~」とジョーが何故か訳の分からない冷静な分析をする。
 その一方でセレビアは動じながらも、絨毯を広げて、準備を進めていた。

「皆! 急がないと置いていくわよ!」

 セレビアが叫び、四人がほぼ同時に殺到する頃には、絨毯は空へ高く飛び上がっていた。
 他の人の目なんか一切気にしていない無計画っぷりが浮き彫りに出た結果で、何かのイベントかと混同する者もいたが、そんなことはもうどうだって良かった。

 地上でパンパン鳴り響く中、空兎逹は必死で空や地上、または中空を見回していた。

「ないわね!」

 焦る気持ちがセレビアを急かす。