「『海老で鯛を釣る』って言葉もありますよ?」

 理想の爽やか教師を描いたようなスマイルで、空兎に現実を悟らせようとするジョーに、仙太は内心で大きく頷いた。

 だが、空兎は思いの外、反抗期であった。

「そんな弱気じゃダメよジョーさん! “鍵”は世界のどこにウロチョロしているかもわからないんだから、世界中に轟くような花火じゃないと極上感が味わえないわ!」

「賛成だな。“極上な光”ってのが最低条件なんだ。どうせならとびっきり派手な花火を打ち上げようぜ!」

 ここでクヲンが後押しする。空兎が大きく頷く中、ジョーもその意見に納得したのか、「そうですね」と小さく言って微笑んだ。

「でも、心意気だけじゃ理想は叶わない。アテはあるの?」

 確かにセレビアの言う通りである。
そこで、空兎は自信たっぷりに、

「ない!」

 と、断言して再びセレビアからデコピンのお仕置きを受けた。

「う〜! 馬鹿になるじゃん!」

「充分馬鹿よ」

 眉根をひそめて抗議する空兎を、セレビアはあっさりと一蹴した。頬を膨らませてもどこ吹く風である。

そこへジョーが「まぁまぁ」と宥めながら入り込む。

「こう考えてはどうでしょう? 僕らが花火を打ち上げるんじゃなくて、僕らが花火大会か何かのイベントに参加するってのは?」

 単純な空兎は、すぐに表情を輝かせたが、セレビアは溜息と共に否定した。

「夏祭りでもないのにそんなの無理よ」

 確かに今はゴールデン・ウィークであって、花火の代名詞ともいえる夏には一足遅い。
 だが、ジョーは「いえ、ゴールデン・ウィークだからこそ、いいんです」と、話を続ける。

「ほら、テーマパークとかパレードでよく花火を打ち上げたりしませんか? 連休で家族連れも多いですし」

「あ・・・・・・なるほどね。一理あるわ」

 合致がいったという風にセレビアは、ようやく納得する。
しかしながら懸念要素がないわけではない。

「そう都合よくイベントがあるかしら?」

 半信半疑といった感じのセレビアに、ジョーはニコリと笑った。

「なんとかなりますよ」

 その笑顔は不思議と、なんとかなる。
 そう感じさせた。