「いや、知らない」

 セレビアの質問に、クヲンはあっさりと即答。
 気取って何かデタラメなことでも答えるのではないかというセレビアの思惑は外れた。
 目の前の少年は、そんな様子などおくびにも見せない。

「それじゃ、あなたを引き入れても、あまりアテになる情報は期待できないわね」

「けど、その在処を示すキーアイテムの事は知ってるんだぜ? すばり、“本”と“鍵”だ!」

 得意気に話すクヲンだが、それより得意気な笑いを上げたのは空兎だった。

「ふっはっは! 実は“本”ならすでにここにあるのだ!」

 ジャーン!と、お決まりの効果音を叫びながら空兎は“奇跡の起こし方”の本をクヲンに見せつけると、クヲンの目がみるみると大きくなっていく。

「おぉ! すっげ! どうやって手に入れたんだよ!?」

「それはもぅ、聞くも涙、語るも涙な血踊る壮大な冒険ストーリーが・・・・・・」

「いや、ただウチの学校の図書室で偶然見つけただけだろ」

 脚色タップリに壮大な冒険ストーリーとやらを語ろうとした空兎を、仙太は、真実であっさりと一蹴した。

「もぅ、せっちんはノリが悪いなぁ」

「空兎の場合は悪ノリっていうんだよ」

「そうよ!」

 呆れた物言いの仙太とは違い、セレビアが迫力のある声で空兎に迫った。

「なに勝手に“本”持ってること言うのよ! 昨日、それが誰かに奪われかかったのを忘れたの!」

「ん~、でもその犯人、クヲン君じゃないと思うよ! 匂い違うし」

「匂いって……はぁ」

 怒鳴る気力が失せてきたセレビアが頭痛を覚えているかのように額を押さえる。
 そこへジョーがなだめに入ってきた。

「まぁ、少し僕達も疑心暗鬼に捉われ過ぎかも知れませんね。ここは協力者が一人増えたと思いませんか?」

 そうセレビアに告げて、クヲンの方を見る。

「それで、一つ訊きたいことがあります。実は君の言うキーアイテムのうち“鍵”の方は僕らも探しているところなんです。それについて何か情報ありませんか?」

「あぁ、知ってるぜ!」

 自信タップリにクヲンは答えた。