セレビアの尤もな意見を聞いても、空兎の表情には疑問符が浮かんでいるといった風だ。

「ん〜、セレビアさん、考えすぎじゃない?」

「あなたが考えなさすぎよ!」

 耳打ちされている状態で怒鳴られた空兎は、耳がキーンとなり目眩を起こした。

「セレビアさん、落ち着いた方がいいですよ」

 セレビアの苛立ちを静めるかのようにジョーがやんわりと諭すと、セレビアは、こめかみを押さえながら嘆息した。

 そんな様子を、クヲンはやはり楽しそうに眺めている。

「ま、あんたが俺を疑うのはわかるよ。けど、お互いの目的が一緒だってのは、分かってるんだ。ここは、手を組んだ方がいいと思うぜ? 俺が持ってる情報なんかもきっと役に立つ」

 それを聞いて、セレビアの眉が微かに動いた。もし自分達が知らない情報をこの少年が持っているのならそれは悪くないと感じたからだ。

 それでも隙を見せないよう、鋭い視線だけは向き続けて、あくまで強気な姿勢は崩さないでおく。

「それで信用しろっていうのかしら? それにあなたの情報がガセの可能性だってあるわね」

「これでも義理堅い性格でね。朝飯の恩を仇で返すつもりはないぜ」

 そう言ってからクヲンは皿に盛られている木の実のスライスの残りを全てフォークに刺して、一気に口に放り込んだ。咀嚼して飲み込むと、さらに続ける。

「こう見えても“奇跡を起こせる宝”・・・・・・いや、“神杯(しんはい)”に関しては結構、研究してるんだぜ」

 その言葉が真実味を持つくらい、彼の表情は自信に満ちていた。
 実際、彼が何気無く発した“神杯”という名称に関しては、空兎達はもちろん、セレビアも初めて聞く言葉であり、驚きに目を見開いていた。

「へぇ~、“神杯”っていうんだぁ」

 新しい事を知って目を輝かせる空兎に、クヲンはどこか勝ち誇った視線をセレビアに向けた。

「なんだ。そんなことも知らなかったのかよ?」

「っ・・・・・・」

 悔しさからか、セレビアは小さく下唇を噛みしめた。
 それでも、咳払いを一つして、セレビアは、表情だけは平静を取り繕う。

「じゃあ、あなたはその“神杯”の在処なんかも知っているわけ?」