「え!? ぅわっ! えっ!?」

 ジョーの何気無い一言が、仙太には猫騙しのように効いたのか、声が言葉にならないほどに裏返ってしまう。

「あ、いえ、恋愛とかそうい意味で訊いたんじゃないんですが、もしかして、そうだったりします?」

 この時のジョーの微笑みが、仙太には少し意地悪なものに見えてしまい、何故か悔しくなった。

「違いますよ」

 仄かに頬が朱に染まってジョーから視線を逸らす仙太。ジョーは焚き火を燃やしている木を枝で突きながら話を続けた。

「そうですか。でも、空兎ちゃんが好きなことには違いないですよね? だって折角の連休に、こうして冒険に付き合っているんですから」

「別に、他に予定とかなかったですし・・・。それに放っておけないから・・・・・・一応、従妹だし」

 仙太の言葉をどう受け止めたのか、ジョーは小さく笑いをこぼした。

「羨ましいですよ、仙太くん」

 若干、的外れにも聞こえるジョーの言葉に、仙太は疑問符を浮かべたが、「それってどう意味ですか?」の一言が出せなかった。

 それを言った後のジョーの顔が、とても悲哀に満ちているものに見えたからだ。

 そこから先の事を仙太はあまりよく覚えていない。なんともいえない空気の中でしばらく沈黙が支配していて、いつの間にか眠っていたのだ。

 目が覚めたら朝。

 辺りは霧が漂っていて、焚き火は綺麗に消えていた。そして、ジョーは、寝袋で寝息をたてている。

(そういえば、あの後、緋上さんも自分の寝袋を出して寝たんだっけ?)

 どうにも曖昧な記憶に、気分の悪さを感じながらも特に変わった様子もないので気にしないことにした。

 すぐ側の空兎もまだ寝ており、ハンモックのセレビアも同じだ。自分のショルダーバッグにくくりつけておいたデジタル腕時計を見ると、AM6:47の時刻が刻まれていた。

 また寝てもよかったのだが、なんとなく目が冴えてしまったので、仙太は起きることにした。他の皆は自然に起きるのを待つことにした。