「じゃあ、このひもをあの目の前の棒に…」

瞬はまたしても美流の言葉を遮る。


「お前さぁ、ちょっとこれ持ってて。」

そう言って渡された物は和太鼓のバチだった。

握ったバチは、微妙に温かくて、瞬が一生懸命に練習したことを感じさせた。


広い体育館を見渡すと、何だか妙に広く感じた。


体育館には、人がたくさんいるのに、今ここにいるのは美流と瞬の2人だけ。



美流は、ふと瞬を見た。


「何やってんだよ!代理委員長!しっかりバチ持ってろよな?」


「も・持ってるよ!」



ふと見た横顔が何でか、かっこよく見えた。




何故瞬は美流を代理委員長と呼ぶのか。


その理由は、美流が図書委員の副委員長だからだ。


委員長は登校拒否…いわゆる不登校だ。


その代わりに美流が委員長をやっているのだ。


ちなみに瞬も副委員長だ。


瞬は2ーA、美流は3ーE。
クラスも学年も違う2人の共通点――それが図書委員の副委員長だ。