驚く僕とは反対に、

「頭で考えてたって わからないんじゃないかしら? って思っただけよ。
 じゃあ聞くけれど、何故、宗一郎は家から出る事をためらうの?」

 母さんはいつも通り、冷静だった。

「だって、よそで食事をした事もないし、それに、眠る場所はどうするのさ?不安だよ」


 それに対して僕の口から出るのは、不安ばかり。

「じゃあ、宗一郎にとってこの家は、『食事と眠る場所をくれて、何より、安心できる場所』という事なのでしょう?大丈夫よ、何も問題ないわ。
 それに、あなたくらいの年の頃、みんな一度は考えることよ」


 そして母さんのいう事は、確かに間違ってはいないと思う。


「問題ない、か……」




 だけど――…

 やっぱりそうじゃない気がするんだよな……




 何だか納得できない僕だった。