ふと見ると、今日は母さんも庭の様子をじっと眺めていた。


「何を考えているの?」

 僕は母さんに聞いてみた。

「何も。どうかした?」

 母さんはとても不思議そうな顔をして、僕にそう問い返しながら続けた。


「それにしても雨って綺麗ね。庭の木々が喜んでいる。木も土も、雨を欲しているのね」

 そして、優しい笑みを浮かべた。


「ロマンチックな事を言うね、母さん。
 僕、雨は 『考えなさい、悩みなさい』 と言いながら 降っている気がするよ」

 僕が珍しく真面目な顔でそんな事を言うものだから、母さんはとても驚いた顔をした。

「あなただって、十分ロマンチストじゃない!」


 僕たちは目を合わせると、大声で思い切り笑った。


「親子だから似ているのね」


 尊敬する母さんに似ていると言われ、僕はとても嬉しかった。