前にも話したとおり、僕の父さんは野良イヌだったらしい。

 甘いかもしれないけれど、僕はそんな父さんの生き方に、少し憧れを抱いていた。



 ひとりで自由に生きるって、どんな感じなんだろう?

 僕はこのままでいいんだろうか……?


 僕は窓越しに薄暗い空を見上げては、こんな面倒くさい事ばかり考えるようになっていた。



 それは、決まって雨の降る日だった。



 雨は僕たちの動きを止めて、

『考えなさい、悩みなさい』

と、優しく語りかけてくれているような気がした。