それにしても、僕は今までネコは臆病な生き物だと思っていた。


 うっかり僕の家の庭に入ってきたネコは、僕を見ると無条件に怖がり、ものすごい勢いで逃げた。

 それが面白かった僕は、そんな猫を追い回して楽しんでいた。

 僕は随分酷い事をしていたのかもしれない。


「まぁ、ここで会ったのも何かの縁だな。他に野良イヌもいないし、当分はここにいたらいいさ。よろしくな、宗一郎!」



 ネコなんかに優しくされる事に、以前の僕だったら我慢ができなかっただろう。

「ありがとう、ショコラ」

 だけど、今は違った。


 “ネコなんか”と言う僕はまた、“宗一郎なんか”と言われる僕でしかなかった。



 僕は自分のゴウマンを、今は、ただ恥ずかしいと思うのだった。