「そうだ、おまえの忘れ物を持ってきてやったぞ」
ツヨシは僕のお気に入りのミドリ色のボールを僕に向かって放り投げた。
僕の前で不恰好に弾む、オバアチャンがくれた四角いボール。
「ヤッター! ありがとう!」
「またバアちゃんに会いに来てやってくれな?」
「うん! ウフフ!」
ご主人は自慢の庭に、イスとテーブルを出した。
そしてツヨシとアッチャンに食事を振る舞った。
笑い声が響く庭に、
今日は僕もいた。
ふと思い出すあの日――
家に帰ってから一度、僕はマリちゃんのママに会った。
「あ、宗一郎、帰って来たんだ」
そう言って僕を一瞥すると、立ち止まる事もなく通り過ぎて行った。
でも、僕はもう、傷つく事はなかった。