ご主人はシロに優しく聞いた。
「盗んだ、とは?」
「もちろん! 最初は知りませんでした。本当の野良イヌだと思っていました。
だけどある日、こいつの首輪の銀色の飾りに番号が刻まれてるのを見つけた時――
電話番号かもしれないと思ったんです。
でも、僕はクロを失う事が怖くて、かける事をしませんでした。本当にすみませんでしたっ!」
シロは泣きながら、頭を下げ続けた。
「君、君! そんな頭を下げるのはやめて下さい。私はそんな風に思ったりしていませんよ」
僕のご主人はシロの顔を覗き込むようにしながら、必死でシロの体を起こそうとしていた。