――ごみ箱。
その昔、僕は母さんに父さんの事を尋ねた事があった。
母さんは、
「ニンゲンの世界にはイヌやネコを棄てる“ごみ箱”があるの。
だからあなたの父さんも捕まらず生き抜けていればいいけれど、もしも“ごみ箱”に棄てられていたら……残念だけど、生きていないかもしれないわ」
と、理解しがたい現実を僕に教えてくれた。
そのとき、初めて僕は“ごみ箱”の存在を知ったのだった。
けれど僕たちには どんなイヌやネコがゴミなのか、その区別が全くつかないないから……
どうしたら棄てられなくて済むのか、全く分からなかった。
だから僕はこの“ごみ箱”が余計に恐かった。
ショコラから直接聞いたわけじゃないけど、ショコラが異常にヒトを警戒するのも、こういう事が理由なんだろうと思う。