僕は迷った。
このままシロについて行ったら、僕は本当にヨソの子になってしまう気がした。
ご主人の家に未練がある訳じゃないけれど……。
ううん、やっぱり未練があるんだな。
僕は、この黒い首輪だけは、何があっても外したくないと思っていた。
僕にとってシロは僕の友達であって、ご主人は、あの家のあのご主人ただひとりなのだった。
動こうとしない僕を見て、この夜、シロは僕の寝床の小屋に泊まり、オバアチャンの家に帰らなかった。
そして僕と、僕の狭い小屋で夜を明かし、僕が寝ぼけている間にバイトに出かけて行った。
「バイト、辞めてなかったんだな」
僕は安心した。
だけど、シロと別れる事を考えると、やっぱり寂しかった。