そんな僕の気持ちを見通し、

「心配しなくても、望んだ時から自然に“何か”が変わるものよ」

 母さんはフフと笑った。

「本当?」

「きっとね。私たちは、みんな、“なりたい自分になれる力”を持って生まれて来ているんだって、どこかの偉いセンセイも言っていたわ」

「なりたい自分か」


 僕は“なりたい自分”を想像し、ため息をつく。

 そんな僕にさりげなく寄り添ってくれる、優しい母さん。



 いつの間にか、雨はやんでいた。

「雨、やんだみたいね。表に出してもらったら?」


 僕は珍しく、首を横に振った。

 今は何だか外に出る気になれなかった。僕はそっと窓辺から離れると、部屋の隅にある僕専用のソファーに飛び乗った。


「このソファー、寝心地がいいんだよなぁ」

 自分の匂いが染み込んだソファーに鼻をすりつけて、モヤモヤした何かを抱えたまま、僕は少し眠った。