「ちゃんと本人たちの口から聞こうよ。
なんで黙ってたのか、それを聞くべきだ」


蝉の声しか聞こえない公園に放たれた良明くんの言葉。
私を見るその顔は、何かを決意したように見える。


「…俺が居る。だから、ちゃんと聞こう」


良明くんが傍に居る。
だから、
冬馬兄ちゃんたちにちゃんと話を聞こう。

良明くんが傍に居てくれる。私は一人じゃない。


「…ありがとう」


泣いた顔で笑う私を良明くんは見、同じように笑う。


「とりあえず、今日は俺と遊ぼ。
せっかく海に来たんだもん」


スポーツドリンクを飲み干し、バスケットボールのようにペットボトルをゴミ箱へシュート。
それを見事に決め、ガッツポーズをしたあとに私の手を掴んだ。


「今は笑って。俺を想って、傍に居て」


鼓動が速くなるのを感じる。
良明くんと一緒に居て、良明くんの言葉を聞いたから…胸がドキドキしてるんだ。


「…良明くんは、いつも優しいね」


ミキさんとのことが無ければ、今でもこの人と付き合っていたのかな?
私の言葉を聞いて振り返るその姿にさえ、胸がドキドキと鳴る。


「優しくなんかないよ。
泣いてるのを放っとけないだけ…それが好きな子なら尚更にね」


……。
その言葉に何も返せない。
良明くんは、まだ私を想ってくれてる…だけど私は、上手く答えられない。


「…ごめんね」


そんな言葉しか出せない。良明くんの気持ちを知っているのに、何も言えない。


「謝ることないよ。
俺が好きでやってることだもん」


…そうだとしても、迷惑かけてることに間違いはない。
だから私は、謝ることしか出来ない…。


「…ねぇ、今度謝ったら俺とやり直してね」

「へっ?」

「別に謝らなくてもいいことで謝ったら、俺と付き合う。
はい決定!今日一日有効ね」


…本気?
良明くんは笑ってる。

私に謝らせないようにするための口実?それとも…本気なのかな?


「さ、行こ!」

「う、うん…」


結局言葉の真意がわからないまま、再び歩き出す。