…何駅か過ぎるとすっかり田舎の雰囲気。
新しい建物が並ぶ街中に比べると、昔から建ってるであろう古い住宅が目立ってくる。


「ここで降りるよ」


そう言われて駅名を確認すると…。


(あ…私がバイトするところの最寄り駅だ。
麻実ちゃんが言ってたから間違いない。
じゃあこれから行くところは…海?)


夏休み、私がバイトする予定となってる海の家はこの駅から歩いて10分くらいのところにあるらしい。
なんだか下見のような気分だ。良明くんは知らずに連れてきたんだろうけど…ちょっと複雑。


「うわ…地獄」


電車から降りた途端にまとわりつく熱気。
言った良明くんはすぐに日陰へと逃げ込んだけれど、やっぱりそこも暑いみたい。


「日に焼けちゃうかもね…大丈夫?」

「あ、うん。一焼け止め塗ってるから平気。
私ね、夏休みにこの近くの海の家で働くつもりなの。麻実ちゃんと…一緒に」


麻実ちゃんと一緒。それを思い出すと少しだけ胸が苦しくなる。
私のそんな状態を知ってか知らずか良明くんは言葉を放つ。


「…じゃあ俺、毎日遊びに行っちゃおうかな!
あ、でも結構遠いからなぁ…美和ちゃん毎日通うの?」

「ううん、麻実ちゃんの親戚のお家でお世話になる予定」


駅を出て、歩きながらの会話。
なるべく日陰に入るようにしているけれどやっぱり暑い。熱い。


「冬馬さん、寂しくなるんじゃない?」


ドキッとする言葉。だけど平然を装って笑いかける。


「きっと変わらず仕事してるんじゃない?
お盆は休みだと思うけど…わざわざ海に来るような人じゃないから。
きっと今年は会わないで過ごすと思う」


会わないで過ごした方がいい。
その方がずっと楽。
そう言った私を良明くんは見つめた。


「…なんだかツラそうな顔してるね。
ズバリ、冬馬さんと麻実が原因?」

「えっ…」


また私…顔に出てた?
良明くんの言葉が、まさに私の心そのものだ。

二人のことを考えると、頭がぐちゃぐちゃになって胸が苦しくなる。


「…話してみな?一人で抱えることないよ」


良明くんの言葉が、心に染みていく。