ちょうどバスは信号で止まり、二人をハッキリと見ることが出来た。
直後に私は姿勢を低くし、二人から隠れる。


(嘘…やだ、なんで二人が…)


なんで二人が一緒に?
やっぱり二人は…恋人…?

胸がぎゅうっと締め付けられ、上手く息が出来なくなる。


(もう、やだ…)


二人はやっぱり隠してた。
私には何も言ってくれなかった。

その事実が、ツラい。


私が冬馬兄ちゃんのことを好きだって麻実ちゃんは知ってる。
私はずっと、麻実ちゃんに相談してきた。

何も知らずに、馬鹿みたいに話してた。二人の関係に全く気付きもせずに。


(…どうしよう。街を歩いていたら会っちゃうかもしれない。
そうしたら二人は、なんて言うんだろう?)


「黙っててごめん」とか「話そうと思ってたんだ」とか言われるのかな?
…なんだか、良明くんとミキさんのことを思い出す。
良明くんは私に何も言ってくれなかった。そして、今の冬馬兄ちゃんと麻実ちゃんも。

…もう何も話せない。冬馬兄ちゃんにも、麻実ちゃんにも。

私の居場所は、もう無い。
ううん、初めから無かったのかもしれない。


私が居なければ、初めから全て…全員が「隠す」なんてことはせずに上手く行ってたのかもしれない。