――……。


日曜日。お店が開く時間が近づいてきたから出かける準備をする。
既に痛いくらいの日差し。夏独特の湿度と気温。
だるさを感じながらも、家を出る。


隣の家、冬馬兄ちゃんの車は無い。
前に言っていたように、何か用事があるから今日は出かけているみたい。

…冬馬兄ちゃんと麻実ちゃんが公園で話していたあの日以来、麻実ちゃんとはいつも通り話せていたけれど…冬馬兄ちゃんとはあまり話さなくなっていた。

それでも、誕生日プレゼントは腕時計を贈ると決めたんだ。
だから今日バイトに備えての買い物をする。

街の中心へと向かうバス。それに乗り込み、冬馬兄ちゃんのことを想う。


(バイトに行ったらしばらく会えなくなっちゃうのか…)


長い長い夏休み。そのうち、どのくらい冬馬兄ちゃんに会えるだろう?
今年の夏、一緒に出かけたりは出来なくなる。
少しだけ寂しいけれど、現状を思えば…会わない方が楽かもしれない。


(あれっ?)


ふ、と見た景色の中。
楽しそうに歩くカップルに目が行った。
美男美女。まさにお似合いのカップル。

そう、それは…冬馬兄ちゃんと麻実ちゃんだった。