……。


結局その日は別の友達とショッピング。
暗くなってきた頃に別れて歩き出す。

直射日光はもう無いのに、まだ暑さが肌にまとわりつく感じ。
パタパタと手で顔を扇ぐけど、効果はない。


「あれ?」


薄暗い公園から聞こえる話し声。
内容まではわからないけれど、聞き覚えのある声…のような気がした。


「だから……のこと……美和は……だよ」

「でも……と俺は……まだ……と思って……」


“美和”と聞こえた気がした。
だから静かに声の方へと近づいてみる。


「…麻実ちゃん?」


薄暗い公園内だけど、近づけばまだハッキリと見える。
私服を着た麻実ちゃんと、もう一人。


「美和…?」


声を出したのは、冬馬兄ちゃんだった。


(どうして二人が一緒に…?)


冬馬兄ちゃんと麻実ちゃんが、二人きりで会っていた?
その理由は何?

考えを巡らせる私に冬馬兄ちゃんは言う。


「…偶然会って、少し話していたんだ」


そう言ったけれど、麻実ちゃんは視線を逸らせて私を見ない。
冬馬兄ちゃんは困ったような顔で私と麻実ちゃんを交互に見た。


「…あ、そうなんだ?
二人が一緒に居るとこなんてあんまり見ないからビックリしちゃったよー」


怪訝(けげん)に思いながらも、私はなんとか笑ってみせる。

…偶然に会うなんてこと、ある?
麻実ちゃんの家からこの公園までは距離があるし、冬馬兄ちゃんだって普段はこの道を通らない。と言うか、途中から車は入れなくなるから通れない。
近道だから、私は時々通る道だけど…。


(何か隠してる…?)


そう感じたけれど…それを問う勇気が私には無かった。

“付き合うとかそういうのは、出来ない”

冬馬兄ちゃんの言葉はコレを意味していたのかもしれない…。