「暑いねぇ。終わったらカラオケでもしに行かない?」


麻実ちゃんも暑そうに団扇を使っていて、私を見て笑う。


「いいねー涼みに行こっか!
と、言いたいとこだけど…今日はちょっと先生に用事があるの」

「えー…そうなんだ…」


一緒に行けると思っていたから、がっかり。
誰か別の人を誘って行こうかな…でも麻実ちゃんが居れば嬉しいのになぁ。


「じゃあ明日はー?」

「残念だけど用事がビッシリ。
今週はずっと空いてないんだよー」


本当に残念そうな顔。
麻実ちゃんは私よりも遥かに友達が多いから、すぐに予定が埋まってしまうみたい。
それでも、出来るだけ私と一緒に居てくれる。

それだけでも充分嬉しいけれど…やっぱり居ないとなると寂しい…。


「土日も無理?夏休み前最後の週末だよー。
夏休み入ったらきっと忙しいもん、パーッと遊ぼうよー…」

「ワガママ言わないの。
夏休み入ったらずっと一緒なんだから、我慢しなさい」


まるでお母さんのような口振り。
それから、ふっと優しい笑顔を見せた。


「土曜日はどうしてもやらなきゃいけない家の手伝いがあるの。
で、日曜日はずっと前から決まってた用事があってね…どうしても外せないの」


だからごめんね、と麻実ちゃんは言葉を続けた。
用事があるなら仕方ない。冬馬兄ちゃんも用事があるって言ってたし…私だけが暇人…って、ちょっと悲しくなる。


「夏のバイト、終わったら遊びに行こ?」

「…ん、そうだね」


カラオケは今週にやらなきゃいけない用事ではないし、いつでもやっている娯楽施設。
だから笑顔を見せて、バイトを終えた後の約束をした。