――……。


午後だというのにまだまだ暑い教室内。もう夏なんだな、と実感する。

学校にエアコン導入も珍しくない時代だけど…ウチの学校はそれに当てはまらない。
職員室や保健室、パソコン室なんかにはあるけれど、毎日使う教室は地獄のようだ。


ほとんどの生徒が団扇(うちわ)や下敷きで風を起こし、ダルそうに授業を受けている。
…私も同じで、暑くて汗が止まらない。


(もうちょっと風が吹けばなぁ。
熱中症になって死んじゃいそう)


ここ数日の猛暑で、学校内でも倒れる人が続出。
エアコンさえあれば…と、みんな思ってるはずだ。


(でも、夏休みになったら毎日海の家で働くだろうし…やっぱり海は暑いよねぇ…。
このくらい我慢!って今は思っとこう…)


今の暑さはまだ準備段階。これからが本番だ。
…とでも思ってやっていかなきゃ身が持たない。

パタパタと下敷きで顔を扇ぐけど、生ぬるい風しか来ない。
私は夏真っ只中の8月生まれだけど…やっぱり夏は苦手だ。


(…学校終わったらカラオケ屋にでも涼みに行こうかな…)


授業中なのに別のことばかりを考えて、テキトーにノートを取る。
先生も暑そうに汗を拭き、黒板に問題を書いていく。

と、そこでチャイムが鳴った。


「じゃあ今日はここまで!
明日はこの答え合わせからねー」


笑う先生に男子が面倒くさそうに声を上げたけど、明日の予定は変わることなく実行されるだろうから…最後の力を振り絞って黒板に書かれた問題を写し取った。

起立、礼を終え、あとは担任が来てホームルームと掃除を済ますだけだ。
担任が来るまでの僅かな時間、麻実ちゃんのところに行って声をかけてみる。