【麻実side】
――……。
痛いくらいの日差しを浴びながら良明を駅まで迎えに行く。
大きめのカバンを片手に笑顔を見せる良明。
(…ほんとに来た)
大まかだけど、仕事内容全てを良明に話したのは数日前。
苦笑しながら「遊ぶ時間は無いね」なんて言っていた。
それがわかったくせに、良明は今ここに居る。
「悪い、待たせたか?」
「…ん、少しね」
制服を身にまとってる時とは違う、ラフな格好をした良明。
同じ電車から降りてきた女性海水浴客たちの視線は全て良明に注がれている。
「…黙ってればモテる顔なのにね」
「なんだよそれ」
ケタケタと笑うその顔は、多分…自分がイケメンだなんて微塵も思ってない顔。
…だけど、暑そうに汗を拭う仕草や、眩しそうに太陽を見る仕草。自然に行われるそういった仕草にドキッとする女子は多そう。
「暑いのに待たせて悪かったな」
「え、あ…平気だよ」
私を気遣う言葉や、ジュースをおごってくれる優しさ。そういうのがあると…私もドキッとしてしまう。
「…良明。仕事は、ほんとに大変だよ?」
生半可な気持ちではやり通すことは不可能だと思う。
静かに問う私に、良明はもう一度笑顔を見せた。
「やるって決めたその日から、俺の心は揺らいでないよ」
真っ直ぐな言葉。良明はちゃんと覚悟を決めてきたんだ。
だから今ここに居る。
「…頑張ろうね」
まだ入院している美和を思い、遠くの空を眺めた。