13歳の子が20歳の人に告白したら、振られるのが当たり前?


「ガキなんか相手にしねーよ」


“好き”と告白した私にあなたはそう言った。



私、山寺 美和(ヤマデラ ミワ)。
幼なじみで7歳年上、藤崎 冬馬(フジサキ トウマ)に告白して、玉砕した。


当時私は13歳。冬馬兄ちゃんは20歳だった。

私たちは幼なじみだけど、7歳も歳が離れてる。

だけど私は、冬馬兄ちゃんに恋してた――。


――……。


「私…冬馬兄ちゃんが好き!
だから…だからね、私と付き合ってください」


私の精一杯の言葉に、冬馬兄ちゃんは笑った。


「ガキなんか相手にしねーよ」


悪気があったわけじゃないんだろうけど、
ちょっと冷たいその言葉と言い方は、私の心にグサリと突き刺さった。


…もう、絶望しか無い。
私、何年経っても7歳年下だもん。


7年先を生きている冬馬兄ちゃんには、絶対に追いつけない。

ずっと、ただの幼なじみ。


冬馬兄ちゃんの傍に居るには、それしか無い…。



――……。


【美和side】


――……。


…カーテンの隙間から差し込む光と、けたたましく鳴る目覚まし時計。


(学校、めんどくさいなぁ)


そんなことを思いながら目覚ましを止めて、布団の中で体を丸くする。


まだ冷え込む4月。
私は高校2年生になっていた。


(13歳の私…“あれ”を夢で見るなんてな…)


嫌な思い出。
冬馬兄ちゃんに振られた、13歳…。

もうすぐ4年になる。
なのに私と冬馬兄ちゃんは、今でもずっと、ただの幼なじみ…。


「美和、遅刻するよ?」

「わぁ!?」


布団を勢いよく取られ、冷たい空気が一気に体を冷やす。


「んなっ…なんで部屋に居るのよぉ!」

「呼んだのに下りてこないから強行突入。
早く準備しないと遅刻だよ?」


…私たちはただの幼なじみ。
そして冬馬兄ちゃんは今でもずっと、私を子供扱い。


(私、もう大人なのに)


なんとか部屋から追い出して、パジャマから制服へと着替える。


…私が告白してからもう4年経つんだよ?
今年私は17歳になるし、冬馬兄ちゃんは24歳になる。

なのにずっと私のこと子供扱いして、ただの幼なじみとして笑ってる。


私はずっと、冬馬兄ちゃんのことが好きなのに。

やっぱりずっと、幼なじみ以上にはなれないのかな…。


冬馬兄ちゃんはウチのお隣さんで、出会いは私が生まれたその日…らしい。

お母さんに聞いた話なんだけど、冬馬兄ちゃんってウチに4年くらい住んでたらしい。

冬馬兄ちゃんが小学校低学年の時だから、生まれたばかり私は当然知らない話。

だから今でもウチの親とはすっごく仲が良い。
まるで本当の家族みたいに。

私のことも…幼なじみとしてじゃなくて、妹としか見ていないのかもしれない。


(そう考えると、ちょっと寂しいな)


階段を下りながら小さなため息。
玄関でお母さんと話す冬馬兄ちゃんは、いつものように爽やかな笑顔で私を見た。


――……。


冬馬兄ちゃんはいわゆる普通のサラリーマン。

勤めてる会社が私の通う学校の目と鼻の先…と言うことで、しょっちゅう送ってもらっている。


「なんか食べるか」


そう言って、通い慣れた(と言うのも変だけど)コンビニで車を止める。

いつもと同じ光景。
そしていつもと同じ、私は用もないのに携帯をいじる。

…これはもう癖だ。時間があればとりあえず携帯を開く。
変化の無い日常に無理矢理にでも「何か」を見つけようと、携帯を開くのかもしれない。


「お待たせ」


開いたドアと共に聞こえた声。
コンビニの袋を私に預け、車を走らせる。


「コーヒーは俺の。
あとは持って行っていいよ」

「あ、ありがと…」


一人で食べきるには多い袋の中身は、おにぎりとサンドイッチ、それにプリンに飲み物…。


「ちょっとこれ、多すぎ…」

「朝飯と昼飯。ほら多くない」


まぁ、そう考えれば…普通かな…?
でも、学校に持って行くにはちょっと多すぎて恥ずかしい…かも。


「まだ若いんだから、いっぱい食えよ」


冬馬兄ちゃんはそう言って笑った。


それから数分して、学校に到着。
歩いたら大変な距離だけど、やっぱり車は速い。


「じゃあ勉強しっかりな」


車から降りた私に、わざわざ窓を開けて声をかけてくれるお兄ちゃん。
風に揺れる髪が太陽の光を受けて少しだけ茶色く見える。


「ありがとう。お兄ちゃんも仕事ファイトだよ!」

「おう、任せとけ」


いつもと同じように笑い合い、お兄ちゃんは車を発進させる。
車はすぐそこの角を曲がるから、あっという間に見えなくなる。

それでも私は、少しの間そこに立って道路を見つめた。