――コンコン


遠慮がちにノックされた白い扉が開くと同時に、愛しい女性が入って来た。


「――千早‥‥。」


久しぶりに呼ばれた俺の名前。

こんなに心に染みる声で呼ばれるのはいつぶり‥?

さっきまで色々な思考が入り混ざってた俺の頭の中は一気にあの日に戻る。 

あの入学式の桜の木がある中庭。

一目で奪われたあの時の俺の心とシンクロする。

そして 今再び奪われた俺の心。