部室からそうぞうしい声が聞こえる。何やら喧嘩をしているようだ。
「だいたい河川敷に住んでるおっさんみたいな顔して、何が寿輝夜だよ! ど田舎のホストか親に後ろ髪を伸ばさせられて染められたガキみたいな名前しやがって!」
「な、なんだと! 名前のことは俺に言うな! 親に言ってくれ、切実に! てゆうか河川敷に住んでるおっさんって、ホームレスって意味? それとも河童って意味か!?」
「ハァ!? バッカじゃねぇの? 河童は治水工事が施された河川になんかにいませんー。トトロとかいる自然豊かなところにしかいませんー。それ以前に河童は基本水中にいるんじゃねぇの!? だって寝ようと思って横になったらお皿の水こぼれちゃって死んじゃうじゃん! ばーかばーか!」
俺と旭は顔を見合わせた。
「なにこの馬鹿な口論?」
旭はうざったそうに目を細めた。俺もあきれていたが、旭の表情に少し微笑ましい気分になった。
「長と山崎だな」
苦笑いしながらドアを開けると、山崎寿輝夜こと被服部顧問で国語教師の四十四歳既婚一児の父は、島崎虎左衛門こと長、趣味は女装の男子生徒に組敷かれていた。
顔が、近い。
「うわっ……汚らわしい」
小声で旭が辛辣な言葉を呟いた。
「あさひ、じろじろ見ちゃ駄目だよ。ほらもっと離れて」
「ふ、ふざけんなー!」
子持ちの中年おっさんを組敷いていた長は怒りをあらわに勢い良く立ち上がって俺に詰め寄ってきた。
「勝手に決めつけてるんじゃねー! こんな汚いおっさん誰が襲うか! う、うわっ! お前は何頬染めてるんだよ! キモッ! マジで堪忍して下さい。キモッ!」
グラビアアイドルがやっているのを良く見掛ける正座を崩したようなける座り方で山崎は気恥ずかしそうに床に目をそらし、頬を赤くしていた。
気持悪さよりも怒りがこみ上げてくる。
長は鳥肌が立ったのか、大きく身震いをした。
「ココ、今日はもう帰ろ」
旭に至ってはすでに踵を返している。賢明な判断だ。
「そうだな。映画か何か借りてこうよ。何観たい?」
「こらっ! 帰るな! 部活をさぼるな! ちゃんと、なんで喧嘩してるの? って訊いて! ねえお願い!」
「だいたい河川敷に住んでるおっさんみたいな顔して、何が寿輝夜だよ! ど田舎のホストか親に後ろ髪を伸ばさせられて染められたガキみたいな名前しやがって!」
「な、なんだと! 名前のことは俺に言うな! 親に言ってくれ、切実に! てゆうか河川敷に住んでるおっさんって、ホームレスって意味? それとも河童って意味か!?」
「ハァ!? バッカじゃねぇの? 河童は治水工事が施された河川になんかにいませんー。トトロとかいる自然豊かなところにしかいませんー。それ以前に河童は基本水中にいるんじゃねぇの!? だって寝ようと思って横になったらお皿の水こぼれちゃって死んじゃうじゃん! ばーかばーか!」
俺と旭は顔を見合わせた。
「なにこの馬鹿な口論?」
旭はうざったそうに目を細めた。俺もあきれていたが、旭の表情に少し微笑ましい気分になった。
「長と山崎だな」
苦笑いしながらドアを開けると、山崎寿輝夜こと被服部顧問で国語教師の四十四歳既婚一児の父は、島崎虎左衛門こと長、趣味は女装の男子生徒に組敷かれていた。
顔が、近い。
「うわっ……汚らわしい」
小声で旭が辛辣な言葉を呟いた。
「あさひ、じろじろ見ちゃ駄目だよ。ほらもっと離れて」
「ふ、ふざけんなー!」
子持ちの中年おっさんを組敷いていた長は怒りをあらわに勢い良く立ち上がって俺に詰め寄ってきた。
「勝手に決めつけてるんじゃねー! こんな汚いおっさん誰が襲うか! う、うわっ! お前は何頬染めてるんだよ! キモッ! マジで堪忍して下さい。キモッ!」
グラビアアイドルがやっているのを良く見掛ける正座を崩したようなける座り方で山崎は気恥ずかしそうに床に目をそらし、頬を赤くしていた。
気持悪さよりも怒りがこみ上げてくる。
長は鳥肌が立ったのか、大きく身震いをした。
「ココ、今日はもう帰ろ」
旭に至ってはすでに踵を返している。賢明な判断だ。
「そうだな。映画か何か借りてこうよ。何観たい?」
「こらっ! 帰るな! 部活をさぼるな! ちゃんと、なんで喧嘩してるの? って訊いて! ねえお願い!」