「確かにルチェルがいないと戦力不足になる。だが陛下もお怒りになられている。___ルチェルには謹慎処分を言い渡す。   これでいかがですか、陛下」


同じ上将軍だが、ルチェルは平民。やはり上将軍になっていても貴族の方が位は上なのだ。そのためルチェルに対して処分を受け渡すことが出来る。フィードにとっては、とても嬉しい特権である。なにせ今みたいに親友を助けられるからだ。


「くっ…まあよい。この程度の処罰に止めて置いたことを、感謝するがよい」


そのあとはたいした意見も出ず、すぐに軍議は解散となった。





「はっはっはっ、いやーサンキューな。お前ならきっとやってくれると信じてた」


先ほどの口論が気になりフィードはルチェルに声をかけた。


「まさか私が陛下の代わりに処分を下すとわかっていてあんなことをやったのか?」


「おー、よくわかったな」


彼は黒い瞳を大きく開けて実に楽しそうに言った。


「な、…はぁー。もし陛下があの時私の発言をお許しして下さらなかったらどうするつもりだったのだ。……いや、そんなことを聞いてもルチェルには無駄か。質問を変える。謹慎になってまで今回の戦に行かなかった理由はなんだ?今回は私も厳しいものだとは思ってはいるが…そんなに勝算はないか?」


そうだ、もし王があのまま俺を殺そうとしたとしたら俺は躊躇なく剣を抜くだろう。いやしかしそうなる前にフィード、お前が止めてくれるだろう?そう心の中で答えた。


そして彼は少し考える素振りを見せ、もったいぶりながら話しだした。


「んー…そうだなあ。いいか?ゲニアの兵士は全部合わせると遥かにサイポロンより多い。そして今回かなりの数を動かしてきやがった。それだけじゃない。南下するスピードが遅い。これは罠だと思うんだがな…なんせ陛下は聞き耳を持って下さらないし?」


ルチェルはなんとなく城に目をやった。城内の床は下級兵士やメイドがピカピカに磨き上げた大理石が敷き詰められていた。


「ったくなんで俺らの城はこんな豪華じゃねえーだよ。つうか大体あの王がなにしたってんだ。椅子に踏ん反り返ってあれやれこれやれって」