全く…ルチェルは…。あれ程陛下を怒らせてはならぬと言ったのだが。というか陛下が短気なのは知っているだろう?


目で訴えようとしても目線が合わないため、それも出来ない。…どうも合わせないようにしている気もするが。


「貴様…!!主に逆らおうというのか。まあよい。わしがせっかく平民などのお前を上将軍に任命してやったというのに。この恩知らずが」


言うやいなや腰に刺さっている剣を抜き、先端をルチェルの喉元にあてた。


「反逆を企てる者は今ここで処刑しないと皆に合わせる顔がないのだよ」


王の言葉に周りの(フィードを除き)貴族が頷く。中には薄ら笑いまで浮かべる者もいた。平民のくせに上将軍まで上り詰めたルチェルが気に食わないのだ。しかし本人は周りがどう思おうと全く気にも留めない。


それどころか、


「ほぉ…この俺を殺せると本当にお思いですか。というかぶっちゃけ俺がいなくなtったらかなりの戦力が失われますがそれでもいいのですかね」


剣先を向けてられようがなんだろうがこの男に恐れというものはない。殺れるものなら殺ってみろ、そういう男なのだ。


この言葉が聞いたのかフォアード王の勢いが止まった。確かにこやつは強い。それに負けたところを王は見たことがない。いや負けたことなんてこの男にあるのか?


そんな者に自分は勝てるのか、と…。まあそんなところだろう。


しかしこの短時間でここまで弱気になれてしまうほど、ルチェルは激戦を勝ち抜いた者だけにある異様な雰囲気を持っているのだ。その雰囲気が力量というものだ。普通、相当な戦いを積んできた者だけに分かる力量が王にも分かってしまうということはこの男はどれほどの力量を持っているのだろうか。


タイミングを見計らって言葉を発した。


「陛下、ここは私に任せてはもらえないですか」


「!!」


ニヤリとルチェルが笑った気がするが…気のせいか?


「な、何を言うフィード!」


「ルチェルの処分を私に任せてはもらえないですか?」


フィードの家系は貴族の中でもトップクラスだ。そんな彼の言葉をフォアード王とはいえ無視するわけにもいかず、渋々フィードの発言を許した。


そこで初めてルチェルと向き合った。