国王がいる謁見の間に足を進めていくと下級兵士がすれ違い際に敬礼をし去っていく。


ここ、サイポロンの主城。真っ赤な絨毯を敷き詰めた謁見の間に、大勢の重臣達が集まっていた。


今日は軍議である。


奥の一段高い玉座に腰を据えた我が国サイポロンのフォアード王の前に、それぞれ定められた地位に従い腰を降ろしている。


周りを見渡すとその殆どが金髪に碧眼、つまり貴族の者だ。貴族以外の者、平民は黒髪、栗色質素な色の髪の毛が生えている。


そんな中、王の至近に跪く上将軍5人の一人ルチェルのみが漆黒の髪に瞳で異様な光景だった。


この男はいついかなる場面においても、不敵かつふてぶてしい表情に見えるのだが今もそんな顔である。


この大陸全土をラルネドという。ラルネドには大きく分けて二つの国が大国として成り立っている。しかし大陸の北方の強国ゲニアが最近になってサイポロンを攻め落とそうと考えていることが分かった。


そして先月の末、予想通りゲニアの国王グフタス王がとうとう大規模な大軍を動員した。


王の定めた指揮官の命の下、一斉に南下し始める。幸いゲニアとサイポロンの国の堺には小国がいくつかあるために時間はまだある。


フォアード王も敵を奇襲によって打倒する覚悟を固めていた。


そのためゲニアに対抗しようと軍議を開いたのだが…


「___そんな奇襲では俺は反対ですね。大体相手に劣る戦力で奇襲も何も、」


はあという溜息の音。無論、ルチェルが発したものだ。


「ルチェル、貴様!!その口に利き方はなんのつもりかっ。わしの命令が聞けぬというのか」


フォアード王は怒りの炎を燃やしルチェルを睨みつけた。


このような状態になってすらルチェルはまるで応えていない。それどころか最初か予想していたかのような受け応えだった。


「申し訳ありません。ですが、先程から申し上げている通り俺はそんな自殺行為には反対です」


ピリピリとした空気の中、貴族の中で唯一ルチェルの親友でもあるフィードが呆れていた。