「司君!!」


 「希愛を!!希愛を!!」



お義父さんがしがみついてくる。



でも、俺の目の前には
希愛を一生懸命説得している
藤堂がいる。



俺の中で、複雑な感情が
湧きあがる。



やはり、希愛は
藤堂を頼ったのか?




 「司君、早く希愛を。」



 「わかっています。 
でも、藤堂が・・・」




「彼が知らせてくれたんだよ。
休んでる希愛を心配して、携帯に
電話したらしくて。
そしたら、学園のチャイムの音は
聞こえるのに、希愛が返事も
しないって。」




そうだったんだ・・・。




 「希愛おいで。」


俺は、ゆっくりと1歩づつ希愛
に近付く。



差し出した手を掴んでくれることを
願って。



 
 「なんなんだよ。 冬星!!」


藤堂がイラっとした態度を
表す。



俺はそんな藤堂の横を通り過ぎると
まっすぐ希愛の立つフェンスへと
歩み寄る。




 「おいで。」


俺は、フェンスを越えた。



目の前で無言のまま立ちすくむ希愛。



ふたりの距離はほんの数十センチなのに
差し出した手を希愛は掴んではくれない。





 「ごめんよ。 俺が全て
悪かった。 だからそこを
動かないでくれ。」




 「こないで!!」




いままで無言だった希愛の
叫び。

希愛にゆっくりと近づいてた
足が止まる。