次の日、アクビをしながら教室のドアを開ける。


「おはよ、勇。」


「お、おう。はよ。」


教室に入ると、結衣の姿がそこにあった。
姿を見るだけで、ドキドキする俺は、ほんと、どうにかしてほしいと思う。


「ね、やっぱ勇もスーツ着るんだよね?」


「ああ、そりゃ…パーティなわけだし。」


「あははー!勇が着たら、きっとホストにしか見えないよ」


「…圭子くん、それは褒め言葉として受け取っていいのかな?」


わざとらしい笑顔で問い掛ける。


「…あ、先生。」


ゲ。幸田の奴、もう来たのかよ。
いつもの様に、手を叩いて、皆に席に着くように促す。


俺は席に向かうが、結衣はその場に立ったままだった。


「…結衣?」


「ん?何?」


…気のせいだろうか?
結衣が、幸田の方を、じっと見ていた様な…。


「…いや。」


俺はそれだけ言って、席についた。嫌な予感が、頭の中で渦巻いた。
気のせいであってほしい。それだけを考えていた。





「勇?」


圭子の声に反応して、体を動かす。
どうやらまた、考え事をしてたら時間が経っていたらしい。


時計を見ると、どうやら昼休みの様だ。
ポリポリと、頭をかいて、圭子を見た。


「ごめん、何?」


「実は、今日の調理実習でカップケーキ作りすぎちゃって。良かったら食べない?」


圭子は可愛らしくラッピングされたカップケーキを差し出した。


「結衣も同じ班だったから、一緒に作ったの。勇いるかなって思って。」


「あ…ありがとう」


それを受け取ると、財布を持って席を立った。