「その銅像の前でキスした二人は幸せになれるっていうジンクスがあるんだって」


「…マジバナ?」


「立証されてないから何とも言えないんだけど、じいちゃんはそのジンクスに惹かれて買ったって言ってた。名前の通り、二人の天使がキスしてる銅像なんだけどね。じいちゃん、パーティー会場にその銅像持っていくんだって。」


ふーん、と相槌を打つと、何故か幸田は拍手をしている。


「凄くロマンティックですねー」


お前は女子か。
なんて、ツッコミを入れたかったが、やめておいた。


「結衣、行くってさ。良かったな?」


「……な、余計なお世話だっつの!」


マサキは俺の耳元で囁き、俺は顔を真っ赤にして、しおりでマサキを叩いた。
幸田は聞こえていなかったのか、こちらをただ見ているだけだった。


まさか、マサキにまで知られていたなんて。
俺は分かりやすいのだろうか?少しブルーになっていた。


幸田の手伝いが終わった後、マサキと二人で帰る事にした。


「勇…これ。」


マサキは、鞄から長細い箱を取り出した。


「なんだよ、これ。」


「じいちゃんから、クリスマスプレゼントだってさ。」


「え…いいのかよ?」


「勇がクリスマスパーティに来るのなら、渡してくれってじいちゃんに頼まれたんだ。」


「ふーん、ありがと。じいちゃんによろしく言っといてくれ。」


「それ、さっき話したジンクスの付けたしなんだけど、その箱に入ってるネックレスを相手にあげて、キスをすると、幸せになれるのが、本当の話。」


マサキは笑って言った。


「このネックレス、三組しか無くて、ペアになってるんだ。じいちゃんはばあちゃんの仏壇に供えるらしい。もうひとつは俺。もうひとつは、勇と結衣。」


「な……っ」


「じいちゃんも知ってるよ?」


爽やかに笑ってみせるが、俺にはどうしても、嫌味な笑顔にしか見えなかった。
マサキは、“がんばって”とだけ言う。そのまま奴は帰っていった。