「ゆ、結衣は?行くのか?」


「そうだね、勇が行くなら行こうかな」


……はい?
俺は目が点になった。


「だって、知り合いが一人もいなかったら寂しいでしょ?」


…ああ、そうゆう事ね。
俺は何を期待していたのか、肩を落とした。


結衣の一言一言、一挙一動に、反応する俺は、どうかしているのか。
どこが好きかとか、聞かれたとしても、俺はきっと答えられないんだろう。


いつからかは覚えていないけれど、いつも、結衣の仕草や雰囲気に、惹かれている自分がいたから。





「勇くん。」


「は……って、どわ!」


机に足をぶつけて、その反動で椅子から転げ落ちてしまった。
少し頭を打って、頭を押さえながら起き上がった。


「…マサキ。わざわざ何の用だよ?」


椅子を机の下に収まるように入れた。
コイツは10年前、一度地元を離れた幼なじみ。


今は一人暮らしでこの高校に通っているらしい。


「や、教室にひとり、ポツンと座ってたからさ、帰らないのかなって思って。」


「…へ?」


いつの間にか、放課後になっていた様だ。周りを見わたしても、誰もいない。


「ちょうど良かった。今、幸田先生の手伝いをしてたんだ。勇も手伝わない?」


「誰が。」


お前と違って、そんなの簡単に手伝おうと思うと思ったら大間違いだ、と言わんばかりに、鞄をつかみ、教室を出ようとする。


「メロンパンと、焼きそばパン。どっちがいい?」


「…は?」


「幸田先生が、手伝ってくれた人にくれるって。勇の好きなほう取っていいよ。何なら二個。」


「…メロンパン。」


「決まりだね。行こう。」


…コイツ、足元見やがって。
そうブツブツと呟くが、マサキは聞こえていないふりをしていた。


幼なじみだからなのか?
何だか…“君の事、何でも分かります”的な空気を感じるの。


ただの、俺の被害妄想だと、いいけど。